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水曜日の放課後。
今日は、由貴が洗濯物を取り込む当番だとかで先に帰ってしまい、いつもの帰り道をひとりで歩いていた。
帰りにある商店街には、近所のおばさん達が晩飯の買い物やなにやらで、今時珍しい八百屋や魚屋に群がっていた。
近くのクレープ屋には桜ヶ丘の制服を着た女数人が、でけえ声で笑いながらいかにも甘ったるそうなクレープを立ち食いしていた。
このまま家に帰ってもとくにやることもないし、暇つぶしに行きつけの本屋に寄る。
本屋は嫌いじゃない。
涼しいし、静かだ。由貴はこの雰囲気に堪えられないらしいけど、俺にとっては悪くない場所だった。
雑誌は前に見たものとあんま変わってなくて、小説の置いている場所へ移動する。
棚に積まれてある新刊を一冊手に取る。
『私は決してバカじゃない』
いや、これ書いてる時点で結構なバカだろ。
手にとった新書は、今流行っている、というらしきもの。
なんでこんなもん売れんだよ。本でまでバカを否定したいほど、日本にはバカが溢れてるのかよ。
どうでもいいことを考えながら、本を元の位置に戻していると、ふと視界にどこかで見た横顔が入ってきた。
黒髪のショート、細身の体型……瀬野美月だ。
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