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瀬野は、何やら真剣な顔で本を見ていた。俺には気づかない。
なんとなくその姿を見ていると、瀬野は手を伸ばして上の方にある本を取ろうとし始めた。
爪先を立てて、必死で本に手を伸ばす。なんとか目当ての本を手にとって、ホッとした顔をしたが、その拍子に近くに積んであった本を倒した。
バラバラと床に落ちていく本。慌てる瀬野。迷惑そうな顔をして一緒に本を拾う男の店員。
何やってんだ、あいつ。
一連の行動を見ていた俺は、あほらし、と呟いて漫画のコーナーに移動しようとした。
そのとき、しゃがみこんで床に盛大に散らばった本を拾っている瀬野を、男の店員が何やらニヤニヤした頭の悪そうな顔で見ているのに気がついた。
瀬野の今日の格好は、黒のブラウスにデニムのスカート。
男の視線の先を見て……なんとなくわかった。
俺には関係ないことだし、ほっとこうと思った。
気付かずに、さらに腰をかがめて、しゃがんだまま本を拾う瀬野。ますますニヤニヤと口元を緩める店員。
……………。
あー、めんどくせー。
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