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だらだらと歩きながら駅前へと向かう。
隣にいる由貴は、すでにバテているのか、猫背気味に歩いている。
道には営業回りらしきスーツ姿のおっさんが汗を拭いながら歩き、やたら無駄に露出した女数人がバカデカい声で話していた。うるせー。
「いらっしゃいませー」
濃いオレンジでまとめられた店の前に立つと、透明なドアがゆっくりと勝手に開く。
店の中には「笑顔はプライスレス」とかかれたポスターに従うように、嘘臭い笑みを浮かべる店員が立っていた。
「竜、何する?」
「あー……コーラ」
カウンターの前に立つと由貴はじろじろとメニューを眺めながら、声をかけてきた。
別に腹も減ってねえし、とりあえずありきたりなジュースを頼んだ。
「んー、じゃあ、俺はー……メロンシェイクにポテトSで」
どんな組み合わせだよ。甘いのかしょっぱいのかわかんねーよ。
メロン自体を食べたことがないくせに、やたらメロンとつくものが好きな由貴は、売れてるのか売れてないのかわからないものを注文していた。
注文を聞いた店員は、一瞬強張った顔をすると、恐る恐るといった感じで口を開いた。
「お客様、申し訳ございません…メロンシェイクは先ほど切らしてしまいまして……」
「ええー! なんで、つか、ないなら先に言ってよー!」
申し訳なさそうに謝る店員に由貴は、ガーンといった効果音が聞こえてきそうな顔をすると、カウンターに手をついて身を乗り出していた。
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