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「やれやれ……全く世話をかける男ね、あいつも」
ヘリの中、大袈裟な身振りで立花さんは悪態をついた。けどさっきから体が少し震えてるから心配なんだね、ニートのこと。
「しかしいきなり敵の中枢に近づけるかも知れないとは、ある意味手柄だな」
抑揚のないこの声はタスマニアンさんだ。戦闘服着てるけど、タスマニアンさんも戦う気なのかな? 大丈夫?
「しかし、雪司くんすまないね。初日からこんなハードなスケジュールで」
「問題皆無」
タスマニアンさんが話しかけてみると、雪司はまたか細い声で呟いた。というかさっきから漢字でしか会話してないじゃない。そんなチャイニーズ女に立花さんはいつものあたし達と接する時と変わらないテンションで話しかけている。
「桜だっけ? あなたにこの隊におけるコードネームをつけるわ。桜、あなたのコードネームはシルバー。いい?」
「了承」
えっ……シルバーってちょっとカッコいいな。
「ポイント340X0M32地点に到着!!総員戦闘準備!!」
あたしのくだらない考えをかき消すように、ヘリのパイロットが明朗快活な声であたし達に呼びかけた。窓から風景を眺めると辺り一面に山が広がっていた。確かにいかにもって感じね……。
「最終確認だ。今回のミッションの目的は、捕虜の奪還、情報収集、敵の殲滅。以上だ。今回は特に捕虜の奪還を優先。敵アジト内ではそれぞれ単独行動、なるべく隠密に事を運んでくれ。ヘリから降りたら各自無線の指示に従ってすぐさま行動を開始。以上だ」
タスマニアンさんが最後の確認をとる。いよいよだ。待ってなさいニート。
ヘリが山中のただ広い野原に着陸した。ここのどこかにあいつが!
「開戦」
雪司がそう呟いてから、みんなが一斉にヘリから素早く駆け出した。
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