阿部さんと一緒

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「まずいな……中止だ。ブラックが死ぬ」 タスマニアンがボソリと呟いた。 「は? なんで? 今からブラックの反撃が始まるいいところやん」 「……瑠琉には2つコンプレックスがあってな。一つはあの胸と、もう一つはあの少しロリっぽい顔。本人はかなり気にしてるらしくて、これを一つでも指摘されると瑠琉は怒る。まぁ、まだ恥じらいながらな」 それはもう経験あるお。 「しかしそれを2つ同時に指摘した場合は……」 タスマニアンはそう言って、ちょいちょいとトレーニングルームの中を指差した。額にはほんのりと汗が浮かび上がっていた。 真っ白い床が広がり、頭上のライトで煌々と照らされるその純白の空間。そこにその空間とは全く似つかわしくない、 ───悪魔がいた。 見ているこちらの息が止まりそうな、驚愕的な殺気。最早近づくことだけで気が触れてしまいそうなこのむせかえるような血なまぐさいそれが、あのルルたんからにじみ出ている。いや、あれは本当にルルたんか? RPG-7の爆風も諸ともしない厚さ数十cmのアクリル板的な物ごしから伝わるそれは、我々の精神にも影響を与え始めた。 「あっ……あっ……」 イエローが泣き出した。泣き叫ぶのではなく、それはまるで今まさに命を奪われんとせん者が戦慄に慄く、そんな顔をしている。 雪司はそのクールな表情をわずかに恐怖に歪ませている。楓ちゃんは直視できないのか俺の背中に隠れガタガタと震えている。あの零たんですら直視できず、下を向いて怯えている。 部外者の我々でこの様だ。今、あそこでその殺気の全てをまともに受けているブラックは恐らく精神崩壊してもおかしくない状況に追い込まれているはずだ。 俺は既に今朝鬼に会ってきたので、ある程度の耐性ができていたが、後ろに楓ちゃんがいなかったら多分おしっこ漏れてた。 ふと、ルルたん……いや、悪魔は不気味な笑みを浮かべ、その口から恐怖の旋律を漏らし始めた。 「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!」 どう考えてもL5だった。 ルルたんはわずか数ページにして、キャラ崩壊したのであった。
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