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「椛が逝っちまって、もう12年か……早いもんだな、七河」
「あぁ……けれど、私には永遠にも感じられたよ」
その日、俺と瑠璃華、そして七河はとある墓地公園に足を運んでいた。
その日はちょうど椛の十二回忌で、って全然ちょうどじゃないんだが、椛の墓の前に来ていた。
「単独の潜入任務だからって、一年ぐらい俺たちの前から姿を消してた椛が楓を抱いて現れた時は焦ったな。産休だったのかよってな……しかもお前らも仕込んじゃった結婚だったのかよ! 的な……あの日から随分年くったな、俺らも」
「私の希望だったんだ、楓のことはなんとなく気恥ずかしくてね。でも、君と瑠璃華のことで話し出すきっかけを見つけられたんだよ」
懐かしむように少し含み笑いを浮かべたような口調で話す七河の背中は、酷く脆く見えていたのを覚えている。
「もう楓ちゃんも瑠琉と一緒で14歳……恭司さん、まだ楓ちゃんと一緒に暮らしてあげられないんですか?」
喪服姿の瑠璃華は墓碑の前にしゃがみ込む七河の背中に、今にも泣きそうな感じで尋ねた。
七河は振り返らなかった。
「まだあの子は迎えにいけない。今のままじゃダメなんだ……」
「今のまま?」
俺が即座に聞き返すと、七河は一瞬黙った後に立ち上がりながらこちらを振り返った。
「大した意味じゃないよ。それより本部に戻ろうか? 今日は新人が私たちの隊に加わる日じゃないか」
「そうですね。あなた、帰りましょ?」
「……あぁ」
俺は何故か悪い予感がしていた。何気なく言った七河の一言が胸にわだかまりを作っていた。
今のままじゃダメ?
ということは新しい環境を必要としているのか?
……まさかな、HEATの唐沢じゃあるまい、一度この国はぶっ壊さないといけねぇとか言い出す訳ねぇよなぁ……。
まさかな……。
その時は思い込み過ぎだと思ってたが、今になってみれば俺の感じていた違和感は正しかった。
つくづく思う、直感の赴くままにあいつを殺しておけば良かった、と。
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