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あぁ……死んだ夫がこんなんなら、さぞ椛も浮かばれないことだろう。夫が厨二病って……。
俺はなんだか悼まれない気持ちになってその場を去ろうとした。正直、新人には大して興味なかったし、眠いし、SO2はうっかりイベント起こしちゃった真ガブリエルで詰んでたしで、もうとにかく帰ることにした訳。
「あぁ……俺帰るわ。暇だったら瑠璃華のことよろしく」
俺は適当に片手をあげて、部屋を出ようとした。
その時、あいつがこんな事を口にしたよ。
「人は何のために戦うのだろうね?」
うわ……。
「……経験値か? いや、序盤の村で全員分の銅の剣を購入し、俺TUEEEEEEEEEEEEEEEE!! 気分を味わうためか?」
「私は思うんだ」
スルーされちゃいました、てへりんこ?
「新しい世界を見たいんだよ」
「アラジンの主題歌か、お前は」
「誰かを傷つけても、騙しても、蹂躙しても、殺しても……より自分に好ましい世界が」
またまたスルーされちゃった? てへりんこ。
「お前は見たいのか、そのくだらねぇ新しい世界……そのアウターヘヴン的な感じのやつが?」
「見たいと言ったら?」
「徹底的に邪魔してやる。んでもって、お前を殺す」
すると七河は俺の顔をじっと見つめてきた。長い時間そのままで、そしたらあの野郎笑いやがった。まるで俺を挑発するような、小馬鹿にするような、そんな気持ち悪い笑い方だった。
「ククク……怖いね。今のはただの冗談だよ、特に気に留めなくていい」
七河はそう言うと俺の横を抜けて、先に部屋を出て行った。
その時、俺は確信していた。
こいつはいずれ俺にとっての災厄になると。なのに、俺はあいつを殺さなかった、止められなかった。いや、止めてやれなかった。
あいつの暴走を……こう、風紀的に。
俺の罪だ、たった一人の友人の堕落も止めてやれなかった、その事がな。
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