193751人が本棚に入れています
本棚に追加
/345ページ
「そうですか、あの二人が……ふふふ、なんだか私も嬉しくなってきました」
その日家に帰って今日のことを瑠璃華に伝えたら、まるで自分のことみたいに嬉しそうに笑ってた。
「覚悟だとよ……17かそこらのガキがもう死ぬことを考えてるなんてな、おじさん悲しいよ」
家のリビング、瑠琉も寝かしつけて静まり返った空間で俺は、瑠璃華が淹れてくれたコーヒーをすすりながらそんなことを呟いていた。
すると瑠璃華は俺の向かいに座って、笑いながら俺の鼻を指で軽くはじいた。
「っ!」
「ガキ、なんかじゃありませんよ? 生きることと死ぬことをしっかり考え始めて、自分なりの答えを出して歩き始めたら、誰だってみんな、もう大人です」
「そんなもんかね……」
「そんなもの、です」
そして瑠璃華はいつもみたいにニコニコ笑って、俺を見つめていた。出会った時から10年以上経っても変わらない、優しい笑顔はそれはもう……トレビアーン。
やがて、瑠璃華は小さく歌を口ずさみ始めました。
「出会った頃はこんな未来、想像できなくてー、でしたっけ?」
「ちょwwwwwwブフォッ!!!!」
コーヒー吹いた。
「あなたがいつも口ずさんでる歌、いい曲ですよね。なんの歌なんですか?」
恋愛シュミレーションゲームときめきメモリアル2のエンディグの曲です、本当にありがとうございます。
とはとても言えなかったので、なんか適当にはぐらかした気がする。
「私も出会った頃は、あなたとこんな道を歩むなんて思いもしませんでした。けど、すごく幸せなんですよ」
「俺もおはようって声かけるたびにドキドキしたもんだよ」
「……? ねぇ?」
「あ?」
「好き、ですよ?」
純粋に嬉しかった。誰かに必要とされていることが。そしてときメモがなかったら、もっとムードに浸れたと思った。
続くと思った。これからもずっとこんな日常が。
けれど不協和音はその音色を確実に響かせて、俺の幸せを穿ち始めた。
そして、しばらくたったある日、俺の日常は崩壊した。
最初のコメントを投稿しよう!