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「君たちが細川くんを救い出そうとしてきたあの日、私の本当の狙いは君にあった。君をこっちの世界に招待したくてねぇ、ククク。あの時、君はタウロスの攻撃が直撃したはずだ。実はね、タウロスの攻撃に細工をさせていた」
「私が長年の研究と調査を重ねて、現代に再構築した彼の古文書に記される古代生物兵器の一つコルラグス。効果は君もよく知っているね? 自己治癒能力の速度が異常上昇、運動能力の異常上昇、痛覚の緩和、そして個人によってそれぞれの特殊能力が現れる。ヴァルゴなら翼、タウロスなら触手のように。まだまだ私も効果は把握しきれていないがね。」
「そんなコルラグスをタウロスの攻撃に仕込ませ、君の体に血液感染させたんだ。リベリオンのメンバーのように人体に直接投入しなかった分、多少時間がかかったがね。しかし実に簡単なミッションだった。まず厄介な細川くんをこちらで隔離する。そしてさらに厄介な田中は勝手に敵陣深くに切り込んでくるだろうと予想。なぜなら私がいると知れば、冷静でいられる男ではない。後の連中は羽虫のようなものだ、いてもいなくても変わらん。全ては計画通りだったよ、退屈な程に」
力無く私はその場にへたれこんでいた。
馬鹿だった私は……。思い返せば、おかしいことばかりだった。
楓ちゃんの適切な処置があったとは言え、何故あれほどの傷を負いながら、意識を保ちその後行動ができていた?
何故あれほどの傷を負いながら、一週間近くで全快できた?
何故あれほどの傷を負いながら、私の体には傷後一つ残っていない?
「全部知っていたんですか?」
私はゆっくりと立ち上がりながら、後ろに言葉を飛ばす。
返事はない。
「何故教えてくれなかったんですが?」
私はゆっくりと振り返る。
返事はない。
「何故あの時、襲撃があることをみんなに伝えなかったんですか?」
ゆっくりと右手に力を込める。
返事はない。
「希理人を」
「希理人を殺したのはあなたですか?」
私はゆっくりと銃口を向けた。
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