一応これ、最終章だけど第二部もやるからね、うん、だから大丈V

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「アレに近寄るな」 あいつの元に駆け出した私の目の前に希理人が立ち塞がった。何か今にも泣きそうな表情を浮かべている。変わってない……私が単独の任務に向かう時にいつも浮かべていた……私を心配する表情。 「いくらお前らがコルラグスの力を手にしてても今のあいつはやばい、下手したら再生不能まで追い込まれる。だからここは俺らに任せろ、な?」 本当に喋り方も、身振り手振りも、全部私が大好きだった希理人で……。 「……本当に希理人なんだ」 「あっったり前♪ 実は死んでから数ヶ月した後に普通に蘇ってた! けど今日まで絶対に会うなって七河さんに止められててね。辛かったよ……会いたかった……本当に会いたかった……だから」 ゆっくりあたしとの距離を縮め、両手をあたしの背中に回す。 「もう零を離したくない」 優しく抱きしめられた。 いつ以来だろ……この感じ。胸が苦しくなるような……まるで心を裸にされるような感覚。 それに溺れたかった。もう二度と与えられることはないと思っていた、夢にまで見たこの感覚に。けど今は……。 私は希理人を自分から引き離した。 「あの馬鹿はあたしが止める」 黒装束の連中をありえない動きで圧倒しているあいつを見据え、希理人の横をすり抜けようとして、腕を掴まれた。 俯いたまま声を震わせていた。 「お前の中に、俺はもういないのか?」 違う……っ! けど、なぜかそれは言葉にならなかった。 あたしが返答に窮していると、いきなり希理人は仲間と思われる黒装束の奴に殴られて吹き飛び、壁にめり込んだ。 「いつまてラブラブやってんだ馬鹿キリ!! カプちゃんもお怒りだ! あいつめちゃくちゃ強くて大変なのに!」 希理人を横から殴り飛ばしたのは、中性的な幼い顔立ちをした少年。喋ってるのはその背中にぺったりくっついてる多分楓ちゃんぐらいの歳の少女。 「カプリ……アリエス……てめぇ……ら」 希理人は半身を壁にめり込ませながらピクピクしていた。 それを唖然として見ていると、人の視線があたしに向いた。少年は無表情で、少女はそれとは対照的に表情豊かに。 「『おい女、あいつを止める方法を知ってるならさっさと止めてこい、殺すぞ』とカプちゃんは言っている。カプちゃんはふざけたおっさんに自慢の武器を壊されて機嫌が悪いんだ! 早くしろよ!」 あぁ、あんたは通訳なのね……てか知らないわよ、あんたらのそんな事情。
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