一応これ、最終章だけど第二部もやるからね、うん、だから大丈V

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夕日が沈んでいく。 もう、終わろうとしている何もかもが。 夜の手前の一番深い夕闇の中、血と火薬の匂いしかしない、火の手が上がった屋上で、ゆっくりとあたしの物語は終わろうとしている。 「キャンサー!! 奴の動きを止めて下さい!! リブラもいつまでも立ってないで早く援護に!! 」 「スコーピオちゃんのお願いならば!!」 「疲れました」 不思議と気持ちは落ち着いていた。周りの怒声と轟音も遠くから聞こえるよう感じがしている。 第一印象はなんか見た目パッとしない真性の変態馬鹿。 本気で嫌いだった……。 口調イラつくわ、下ネタは言うわ、経費で気持ちの悪いもの買うわ、おしっこ漏すわ、メイドに一人エッチ見られるわ……他にもまだまだ。 けど、時折見せる男っぽさのせいで……ちょっと印象変わった。0点から赤点って感じ。 『俺と添い遂げちゃいなよwwwwww』 あいつにそんなことを言われたいつかの冬の日……私の中でとっくにあいつは及第点だったなぁ。 憎しみだけで生きていた苦しい日々に、転がりこんできたあの馬鹿ニート。 うん、 好きだったよ。 悔しいけどあんたのこと、細川正のこと大好きだった。 違う世界で、違う立場で会えてたら、あたしは絶対あんたから離れなかった。 けど、こんなおかしな世界で出会ってしまったから、お別れしなきゃ。 呻き声をあげながら武器を振るっているあいつはひたすら必死だった。あたしなんかのために自分の存在を犠牲にして。 あたしはあいつにゆっくりと近づく。リベリオンの連中はゆっくりと距離を置いた。きっと今から何をするのかわかっているから。 馬鹿ニートは長門の侵食が始まっていたけど、以前見たまがまがしい鎧まではまだ纏ってないから大丈夫。 馬鹿ニートは見るからに動揺していた。あたしには攻撃できないみたいだ。そんな姿になってもあたしってわかってくれて……ちょっとだけ嬉しい。 「今までありがとう」 頬に手を伸ばす、 「もし生きのびたなら」 万が一のため解除方法はちょっとだけ変えるようにイエローくんに言っててよかった。 「あたしを」 解除コード───キスと、私の声。 「きっと」 唇を合わせて 「あたしを殺して」 細川正の胸にナイフを突き立てた。
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