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俺の名前はシャン。師匠であるファウストの言い付けで、都市からわざわざ風の町にクロスと2人で調査に来ていた。
「最近おかしな事件が頻発しているから気をつけて下さいね、か」
町の中を並んで歩いていた俺は、師匠に言われた事を思い出して呟いていた。
「心配ですか?」
クロスは俺の幼なじみで、昔から一緒に行動する事が多かった。頭が切れるで頼りになるやつだ。
風になびく長い金髪を手で抑えながらクロスが言った。
「大丈夫ですよ。調査だけですから」
「俺は別に…」
時々、こいつは興味がある物を見つけると暴走する時がある。今回はないように心の中で祈っているのを知られるのはまずい。
その時、突然の激しい風と揺れが町を襲った。俺は風に飲み込まれそうな感覚に陥りながらも、荒ぶる風の中から微かな魔力の波動を感じとれた気がした。
風が収まり始めていた。
クロスは何事か考え込んだ後、鞄から水晶を取り出した。
水晶に宿る精霊の力を借りるのだろう。クロスが魔力を水晶に込めると淡く輝きだし、水晶から赤い猫の様な姿をした精霊が現れた。
クロスと契約した精霊ルーだ。
「ルー、僕たちに力を貸して下さい」
「わかったよ。マスター」
そう言うとルーはその場から消えた。
「ちょっと待てよクロス。師匠に連絡を入れなくって良いのか?」
「何を言っているのですか! 犯人に逃げられてしまう前に捕まえますよ」
慌てる俺をよそにクロスが暴走している。俺は諦めて付いていく事にした。
俺たちは術者を探すべく調査を開始した。
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