第1章 風の町・始まり

2/11
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
俺の名前はシャン。師匠であるファウストの言い付けで、都市からわざわざ風の町にクロスと2人で調査に来ていた。 「最近おかしな事件が頻発しているから気をつけて下さいね、か」 町の中を並んで歩いていた俺は、師匠に言われた事を思い出して呟いていた。 「心配ですか?」 クロスは俺の幼なじみで、昔から一緒に行動する事が多かった。頭が切れるで頼りになるやつだ。 風になびく長い金髪を手で抑えながらクロスが言った。 「大丈夫ですよ。調査だけですから」 「俺は別に…」 時々、こいつは興味がある物を見つけると暴走する時がある。今回はないように心の中で祈っているのを知られるのはまずい。 その時、突然の激しい風と揺れが町を襲った。俺は風に飲み込まれそうな感覚に陥りながらも、荒ぶる風の中から微かな魔力の波動を感じとれた気がした。 風が収まり始めていた。 クロスは何事か考え込んだ後、鞄から水晶を取り出した。 水晶に宿る精霊の力を借りるのだろう。クロスが魔力を水晶に込めると淡く輝きだし、水晶から赤い猫の様な姿をした精霊が現れた。 クロスと契約した精霊ルーだ。 「ルー、僕たちに力を貸して下さい」 「わかったよ。マスター」 そう言うとルーはその場から消えた。 「ちょっと待てよクロス。師匠に連絡を入れなくって良いのか?」 「何を言っているのですか! 犯人に逃げられてしまう前に捕まえますよ」 慌てる俺をよそにクロスが暴走している。俺は諦めて付いていく事にした。 俺たちは術者を探すべく調査を開始した。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!