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「分からない?別れようって言ってるんだけど」
なるべく笑顔で、だけど一段と冷たく答えた。
こんなに冷たい俺の声は初めて聞いたんだろうな。
優一はちょっと怯んでた。
「…俺が、浮気したから、か?」
俺から目線を外し、伏せた瞳には罪悪感が見え見えだった。
浮気する度に、そういう瞳をしていた優一。
そんな優一に、俺も本音で話さなければいけないな、と思った。ただ別れたいって言って、逃げ回るのも嫌だったから。
追いかけて来てくれた、それだけで、もう…充分だよ。
俺は静かに首を横に振った。
「違うよ。原因は違う。きっかけは、それだけど」
俺の言葉に、意味が分からないという顔をした。
構わず俺は話した。
「2年くらい前からかな。高校を卒業して、少し経ったくらいから、別れなきゃいけないと思ってたんだ」
11月の肌寒い空気が揺れた。
俺が乗る予定だった電車が駅に滑り込んだ。
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