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「壮…太……」
涙で優一の顔が見えない。
でも、悲痛な表情をしてるんだろうと、声から予測できた。
「いや、ちがっ…う…!…ごめ、…!」
なにが「違う」のか、なにが「ごめん」なのか、自分でも理解できなかった。
不意に優一の右手が動いたのが見えた。
それは、ゆっくりと戸惑っているかのように、俺の頭を撫でた。
「じゃあ…元気で」
そう聞こえた時、自然に笑えた。
「うん」
これで最後。
悲しい、淋しい、…だけど、後悔はない。
丁度よく、電車が来た。
あれに乗れば終わり。
俺達の関係が、すべて終わる。
優一の手が、ゆっくりと離れていく。
「…じゃあ、ね」
「あぁ」
振り返らずに、電車に乗った。
涙は止まっていた。
大丈夫。
まだ言い聞かせるようにしか言えないけど。
大丈夫。
必ず、笑える時が、くる。
大丈夫。
次に会う時は、笑えるはずだから。
だから、──バイバイ。
-別離- 終
→あとがき
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