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こんな関係になって6年、経つのかな。
そこら辺は曖昧。
だけど、出会いは鮮明に覚えてる。
物心つく頃、親は既にいなくて、全寮制の高校を出たら、俺にはどこも行く宛がなかった。
毎晩、違うオヤジに抱かれて日々を過ごしていた。
そんな日々も、精神的にも体力的にも限界がきた時、アイツに出会った。
町外れにある小さな公園でブランコに乗りながら、いつの間にか寝ていた俺のとなりのブランコに、アイツは座ってた。
目が覚めた俺を見つめて、優しく笑ったんだ。
「起きた?」
なんて言われた。
頭がはっきりと覚醒してから、行くところがないから、宿探ししなきゃいけない旨を話した。
「ふーん?…うち来る?」
今考えたら不審者極まりないけど、その時の俺にはアイツが救世主に見えた。
あと、顔がものすごい俺の好みだった。
それだけ。
笑えるっしょ。
でも、アイツに出会ってから、そんな生活は止めて、バイトして一人暮らしできるくらいまで俺の生活は変わった。
会話はほとんどなかったけど、夜だけでも独り占めできるなら、それで良かった。
なんの仕事をしてるのか、何歳なのか、恋人はいるのか、なんで、俺なんかを拾ったのか…
聞きたいことは山ほどあった。
一度聞くタイミングを逃してしまってからは、諦めたようになにも話さなくなった。
それに、アイツからはなにも聞かれなかったから…。
もともと無口なんだと思うけど、俺といるときは、きっともっと無口だ。
外のアイツを知らないから、断言できないけど。
免許証をこっそり盗み見して、名前と年齢と誕生日を知った。
知ったところで、誕生日プレゼントをあげるとか、そんなことは絶対に出来ないけど。
渡したって、ウザがられて終わりだ。
アイツは俺によっぽど興味がないらしい。
携帯のアドレスと番号、名前、くらいしか、アイツは知らないんじゃないだろうか。
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