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わかってたけどさ。
放課後の屋上。
何と無く買ってみたしゃぼん玉を、何と無く吹いてみる。
【好きだよ】
「あーあ」
夏の陽射しは、夕方になっても眩しく輝いていて、少しの風で空に舞うしゃぼん玉は、太陽の光を反射して虹色に見えた。
「……わかってたじゃん。落ち込むなって」
自分に言い聞かせる。
誰もいない校舎裏。
綺麗な黒髪の女の子に告白されてるのを見た。
相手は俺の想い人。
照れたように微笑んだあの人を見たくなくて、勢いで走って逃げてしまったけど。
「きっと、オッケーしたんだろうな」
可愛い人だったもん。
あれは多分、あの人と同じクラスで、俺よりも二つ上の先輩。
「………お似合いじゃん」
同級生カップルの誕生ですか。
おめでとう。
なんて、言えるわけないじゃん。
「俺だって、ずっと好きだったんですよー」
しゃぼん玉と一緒に、言えない言葉を吐いた。
風にのって、
高く高く昇るしゃぼん玉。
「しゃーぼんだーまー、飛んだー」
俺の気持ちも一緒に飛んでいけばいいのに。
「屋根まーでー、飛んだー。あれ、歌詞合ってるっけ?」
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