好きだよ

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屋根まで飛んで、 壊れて消えた。 「へったくそだなぁ」 「!?」 「しゃぼん玉?懐かしいな」 その人は、いつの間にか俺の後ろにいて。 「俺にもやらせて」 俺のしゃぼん玉を取って、吹いた。 空の青と、彼の黒い髪が溶けあうみたいで綺麗だと思った。 「俺の、取らないでよ」 それは彼に言ったのか、それとも黒髪の可愛い人に言ったのか。 「返してよっ」 「いいじゃん。少し俺にも遊ばせて」 彼は屈託のない笑顔でしゃぼん玉を吹いた。 次々と天に昇るしゃぼん玉を見ていたら、凄く虚しい怒りに襲われたから。 「いいの?一緒に帰らないの?」 嫌味のつもりで言ってみた。 「……見てたのか?」 「可愛い人じゃん。良かったね」 やっぱりおめでとうは言えないけど、精一杯虚勢を張って賛辞した。 今、俺、笑えてるのかな……? 「それで、いいの?」 「………え?」 「お前はそれでいいの?」 え? しゃぼん玉を手に、彼は酷く真面目な顔で俺を見た。 「俺が、あの人と付き合っても、お前は何とも思わない?」 「……別に。何とも…………」 何が言いたいんだよっ!あんたっ………。 何で俺の気持ちなんか聞くんだ。 何で俺は『別に』なんて答えてるんだ。 今、気持ちを言うタイミングだったんじゃないの? 「俺、別に………関係ないし」 すらすらと口から勝手に言葉が滑り落ちる。 けれど、心臓はバクバクいってて、もうどうしていいかわかんない……っ 「そっか。………じゃあ、俺帰るな」 そう言って、彼はしゃぼん玉を俺に手渡すと、俺に背中を向けて歩き出した。 「……っんだよ………」
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