序章 プロローグ

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 中世ヨーロッパ貴族の屋敷を想像させる豪華な、しかしどこか寂れた廊下を、髪の毛の所々に白髪が見えているがまだ全体としては若々しい、一人の男性が歩いている。   「……ついにこの時が来てしまったか」    溜め息と共にそんなことを呟きながら、一枚のドアの前で足を止める。彼は少し躊躇する素振りをしたが、すぐにドアをノックした。    少し間があり、どうぞ、と返事。彼が部屋に入ると、そこには一人の少女が窓の外を眺めながら佇んでいた。   「失礼します、お嬢様。少し、お話があるのですが……」   「どうしたの?」   「それが、その……」   「早くして、気になるじゃない」    無邪気な笑顔を浮かべながら、彼女は子供の様に急かす。彼は決意の表情を浮かべる。   「奴らにこちらの居場所を掴まれました」    一瞬その表情を曇らせた彼女だったが、すぐに元の無邪気な笑顔に戻る。   「そう。今回は早かったわね。三ヶ月か……ねぇ、こんどはどこに逃げるの?」    嬉しそうに尋ねる彼女。   「よく聞いてください、お嬢様。最近すぐにこちらの居場所を奴らに突き止められています」   「そうね、確かに最近よく居場所を変えるわね」   「そうです。そしてついに、隠れる場所が無くなってしまいました――」   「そんな……どうするの?」    今まで崩れなかった彼女の表情がここに来て、少し焦りの表情をみせる。   「……一つだけ……方法があります」    少し口籠もりながら、そう彼は話す。
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