artless days

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雲の隙間から朝日が射し込んでいる。 朝方に少し降った雨で出来た水溜まりに反射して、心なしか明るい未来を想像させる道だ。なんて冗談を考えながら通学路を歩いていく。 幸運にもこの時間で雨が降らないのは良いことだ。 春は過ぎ、気温は湿気にやられて肌に張り付く蒸し暑さに変化を遂げた。 欠伸を一つ。かなり眠い。夜中のロードワークは朝起きるにあたって尾を全力で引いてくる。擬人化した倦怠感が結んでいる後ろ髪を引っ張ってくる想像をしていると、背中に鈍い打音が鳴る。 「おーはよう!!」 「……いっっっ!!!?」 無防備な背中に叩き込まれた平手打ちが、俺から呼吸を奪ってくる。 ……てかマジで痛い。少なくとも女子から貰う威力じゃないのは確かだ。 「朝から大袈裟だよ?西原」 呼吸を止められて一秒、真剣にテメエの持つ身体能力を考えろ。朝っぱらから背中に張り手とか女子力低い。 しかも良い笑顔なのが余計にうっざい。 憎さ百倍だコノヤロー。 「……お前は朝からホンット元気いいなオイ。 その半分くらい俺に分けて欲しいくらいだっ……」 なんて言い返そうとしたら喉に手刀。今度の狙いは呼吸器の出口ですよ。俺に生きさせたくないのか? ちなみに誤字じゃあない。 「ウゲェッ、ゲホッ!?」 「ったく、朝っぱらからアンタが背中丸めて暗ーくなってるから元気にしてやろうとしてんのにさ、心配して損したっ! ほら、早く行くよっ!!」 真っ当な人間はきっともっと正攻法で心配するもんだ。慰めに打撃は必要無えんだよ。なんて自分で合格点出してやれるツッコミを、むせた口から言葉に出来ないのが辛い。 「ちょっ、ちょっと待て! 萩本!!」 辛うじて出た言葉も引き留めるくらいの言葉で。とりあえずは目の前を走るクラスメート、 ハギモトサナ 萩本沙奈を、咽を押さえたまま追っていく。 点々とある水溜まりの一つを踏みつけて、まずはその一歩を踏み出す。 ───
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