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「…入る？」
「え、」
あたしは下げていた頭をバッと上げてＳくんの顔を見た。さっきと変わらない表情で扉を少し大きめに開いた。
「寒いじゃん、あがってけば」
「…」
今までそう言われたことはなかった、ずっと玄関先だけの会話だけだったから。もちろん、急にそんなこと言われてしまったからあたしの頭は大混乱中で整理がつかないくらい。
ああどう答えたらいいの、こんな時！
１.お言葉に甘えてあがっとく
２.おもっきり遠慮しとく
３.無言を突き通す
脳内の選択肢はたった３つ。こういうとき、あたしののうみそは狭いんだな、なんてくだらなくて今はまったくもって関係のないことを考えるんだ。あーもーっ、ばっかみたい！
「だいじょぶだよ、誰も居ねーし」
（んなこと聞いてない馬鹿！こっちは今一世一代の決断を迫られてるっていうのに！）
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