3人が本棚に入れています
本棚に追加
扉の前に立ち、ゆっくりと扉の取っ手に手を掛ける。
(一体、中で何が起こっているんだ・・・。)
和真は自身の高鳴る鼓動を必死で落ち着かせながら、頬を伝う汗を拭っていた。
裏稼業を始めて6年目であるが、その年数なら今までも修羅場・危険な敵にも出会ってきている。
しかし、ここまで自身の「死」 をイメージさせられる殺気をぶつけられた事は和真自身、今までになかった事だった。
しかも、たかだか齢24歳の若者である。
上記のような反応を示すのは至極当然の事であった。
和真は取っ手を引き、ゆっくりと開けた。
眼前には先程までの夕方の街並みから、BAR特有のやや暗めな店内の模様が広がっていた。
店内にはカウンター内のマスター一人とその向かいに客と思われる黒のスーツに身を固めた男性が一人座っていた。他にまだ客は来ていないようで空席の方が目立っている。
『すまない、遅くなった』
和真はそのまま店内へ歩き始めると先ずはマスターへ詫びた。
「いえ、私は大丈夫ですよ。」
マスターはグラスを拭きながら答えると、和真へ一瞥し、直ぐに目の前に座っている依頼人にも一瞥するとそのまま自身の持っているグラスへと視線を落とした。
『!』
どうやら先程の殺気で判断力が鈍っていたらしい。和真はマスターからの一瞥の意味と自分への殺気が消えている事に気がつくと、依頼人の傍まで歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!