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12月25日。
PM7:00ジャスト。
街中に設置されているおっきな時計が華やかな音を立てて時刻を知らせる。
そんな音を聞きながら、亮子のお寺で行われている【クリスマスイベント祝勝会】をこっそりと抜け出した私はフラフラと歩いていた。
というより、今日1日私の調子はどことなく熱っぽく浮ついていた。
それは朝ご飯を食べてても、お昼にユキさんとお出かけしても、夕方出かける前に母さんとお話しても…。
それもこれも、昨日の【おでこにキス事件】とそれ以来姿を見せないアイツが原因なのは言うまでもない。
そんないきさつでさっきの祝勝会も乾杯をすませた後、トイレに行くと言って出てきてしまったのだ。
…ふぅ…。
…なんかダメだなぁ、私…。
…いつまでもドキドキしてて何も考えられない…。
…って、違うよね。アイツのことしか考えられないんだ、今の私…。
もう何回、そのシーンを頭に繰り返したのかわからない。
その度におでこは優しい熱を帯びて、私を困惑させていた。
そんな感じでポーッとしながらクリスマスで賑わっている駅前商店街を歩く私に不意に声がかかる。
「おっ、なんだいクリスマスだってのに一人なの?」
声の主は3、4人くらいの大学生っぽいちょっと悪そうなお兄さん達。
いつもの私なら一目散に逃げ出すはずが…。
「………はぁ。」
と、顔すら見ずにため息をついてその場を立ち去ってしまった…。
もちろん、真面目に軟派しにきてる(私に軟派!?)お兄さん達にしてみれば、屈辱以外の何者でもない。
「はぁ、じゃねえよ。ちょっと待てよ!何シカトしてんだよっ!!」
当然のように罵声を浴びせられるが、今の私には足止めにもならない。
…はぁ。
…このコースだとお家に帰る前に、例の公園に足が向いてる気がするなぁ…。
…まぁ、いっか。
…雪も舞ってきたし、少し頭冷やせば落ち着くかもしれないし…。
…はぁ、アイツの顔見れば少しは楽になるのになぁ…。
そんな事を考えて上がったり下がったりしながら、とうとう私は知らない間にお兄さん達を振り切ってしまった。
その背後に危険を予兆する舌打ちと、変にくぐもった嫌な笑い声にも気付かずに…。
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