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「…バカはバカだろ。いいから、こっち来いよ!」
舌打ちをしながら少し語気を荒くしたおサルのお兄さんが強引に私の手を引っ張る。
しかし、かなり頭に血が上ってる私にそんな事望むのは無理ってもんだ。
「ヤだよ!絶対ついてなんか行かないんだからっ!!」
私はかなり大きい声で叫んでから素早く行動を起こす。
まず、引っ張られた手を乱暴に振りほどくと同時に、その勢いを利用して奴らから2、3メートルくらいの距離を開けるバックステップをする。
そして、備え付けのちょっとおっきめの木までさがると、お兄さん達を睨みつけたのだ。
その一連の行動が終わった瞬間、微妙におちゃらけていた空気が一気に張り詰め、私に深刻な事態が引き起こされようとしていた。
それはまず、少し離れた場所にいるおウマのお兄さんから…。
「…ほら、だべってるよりさっさと気絶させた方が早かっただろ?」
携帯をしまいつつそんなことを言いながら、上着のポケットに忍ばせていた【スタンガン】をバチバチ言わせて私に近づき…。
「…くくく、ちげえねえ。お前の言うとおりだわ。さっさと運ぶか…。」
それに呼応して、目の前のおサルのお兄さんはすごく歪んだ笑顔をみせてから、迷彩柄のズボンにいっぱいついてるポケットのひとつから、手錠(!?)をジャラジャラ言わせて私に見せつけながら近付いてくる。
正直、こんな装備を持ってるとは考えも付かなかった私は、テンパりにテンパりを極め頭の中がぐちゃぐちゃになってしまった。
…あわわわわ!
…こ、これじゃあ、母さんが良く見てる《火曜サ○ペンス劇場》のワンシーンだ!
…しかもこのままいけば、《可哀想な役の女優さん》みたくなっちゃうかも…。
そんな風に考えて、近寄るお兄さん達を震えながらみる私は、無意識におでこに右手を当てて絶望に包まれようとしていた。
しかし、この絶体絶命の場面では無意味な行動だったかもしれないけど、奇跡的におでこに当てた右手から起死回生ともいうべき、優しい温もりが伝わってきたのだ…!
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