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「離してっ!はーなーせー!!」
渾身の力で体を動かして逃れようとするがガッチリとホールドされていて身動き一つ出来ない。
…あぅぅ、なんとかしなくちゃ…!
…抱かれてるだけでもありえないってのにぃ…。
…しかも、お仲間さんはなんか急いでこっちにきてるし…!
そう、後ろから聞こえてくる足音は、ドサッ、ドサッと慌てて転んだような音がした後、ゆっくりと歩く音に変わって着実に近づいてきてるのだ。
…すぐ後ろまできてるよぅ…。
…あぅぅ、こんな時にアイツがいてくれたら…!
すがるようにアイツの姿を思い浮かべる私の背後に、無情にも誰かの立ち止まる気配がする。
私の進退が決まろうとしていた…。
「遅かったじゃねえかっ。さっさと運ぶぞ!」
興奮して後ろも振り向かず命令するお兄さん。
…いざとなれば舌を噛み切ってやる!!
乙女の危機に死を覚悟する私。
しかし私達の思惑はスルッとかわされたっぽく、後ろにいるはずのお仲間さんは命令通り動く気配を見せず、何やら様子を伺っているようだ。
その気配にイラついたお兄さんはものすごく怖い声で再度命令する。
「おい、なにしてんだよっ!早く足持てよ。さっさと運ぶぞ!」
凄まじい怒声が雪の舞う夜の公園内に響き渡る。
その怒号を受けた私は瞳を閉じて体を縮こませてしまう。
…あぅぅ、最後のX'masだけはアイツと…。
そして心の中で諦めにも似た後悔を呟き終わろうとした瞬間!
『…“ラブラブで過ごす予定だったのにぃ”ですか、真輝さん…。』
絶対に聞き間違えることのない【あの声】が、私の背後からかけられたのだ!
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