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時間が止まる感覚って言うのは、こういうことだと私は思う。
完全な大ピンチに突如として現れたアイツを、私は【トラワレのお姫様を華麗に救出する王子様】とばかりに感じてしまったのだから。
…やっぱり、やっぱり、アイツは私のことを…!
ドラマチックなシチュエーションに、私の頭の中は完全に【恋する乙女モード】へと切り替わり、瞳をウルウルさせアイツの助けを期待して待つが…。
『…ところで真輝さん。どんなイタズラをしたんですか?相手の方は相当気色ばんでるようですが…。』
…はい?
そう、例えるなら【ちび○る子ちゃん】でよくある石で出来た【ガーン】って文字が頭に落ちてくるような衝撃。
期待して待っていた乙女な私に聞こえてきたのは、まるっきり正反対の素敵な毒舌だった…。
『後ろから羽交い締めにされる程ですから余程のことをしでかしましたか…。いいですか、真輝さん。どのようなところにでもトラブルというのはありまして…』
…な、なななな!
そしてこの状況にもかかわらず、更にのんびりとお説教始めるアイツに、私の頭の中にある色んなスイッチが入ったのは言うまでもない。
「な、なななななんてこというの、アナタはー!!もとはといえば昨日の夜からアナタが顔見せないせいでこうなったって言うのにぃ!!」
私にしてはかなりの勢いで叫んではいるものの、この発言もアイツにとってみれば目玉焼きをひっくり返すより楽な作業なわけで…。
『…なるほど。僕が顔を見せないせいで、朝ご飯もロクに食べず、ユキさんとの会話も適当。挙げ句の果てに祝勝会まで抜け出す、と言うわけですか。…困ったものですね。』
と、余裕しゃくしゃくで今日一日の行動をまるで見たかのように突っ込まれ返される始末。
そんなアイツの言葉に、羽交い締めされてることなんかさっぱり忘れてしまってる私は地団駄を踏んで悔しがる。
…あぅぅ、やっぱりコイツはイジワルだ!
…私の気持ちなんて知ったこっちゃ…。
ないんだ!と頭の中で大絶叫しようとした瞬間だった。
突然、体の向きが変わりアイツを見据えた格好にされたのは。
そして…!
「てめえらは、なに勝手にゴチャゴチャぬかしてんだよっ!!」
そう、この場の支配者っぽいお兄さんが怒りの叫びをあげだしたのだ。
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