島風様の作品✨

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さっきまでのおちゃらけた雰囲気はまたも一転し、何ともいえない緊張感がほのかに雪の舞う公園に溢れ出す。 というのも、私達の【いつもの会話】にしびれを切らしたお兄さんが急に後ろへと振り、ナイフを私の喉元にあててアイツを威嚇し始めたのだ。 「おい。そこの黒服!これが見えないわけじゃねーよな?」 【これ】=ナイフなのは説明しなくてもミユちゃんでもわかる。 その凶器をもてあそぶかのように私の喉元から外すと、ワザと顔の前でヒラヒラさせてアイツを威嚇を続けるお兄さん。 それに対してアイツは、その華奢な体をコワバらせることなく自然体で受け答えた。 『…ふむ、これでも両目の視力は衰えてはおりませんので。』 強がるわけでもなく、また怯えてるようでもないその態度に、お兄さんは不審そうな気配を出すが、あくまで丁寧なアイツの口調を判断材料にしたのか、見下しながら話しを続ける。 「ならさぁ、わかるでしょ?邪魔、するなよ…。ほら、そこどけよ。なんならお前にも楽しませてやろうか?どうせ、お前もこいつに手を焼いてんだろ?…あはは、あーははははははっ!!」 夜の公園に狂った笑い声が響き渡る。 たぶん、アイツが抵抗するなんて思ってもいないからでる勝利の笑いだろう。 でも、その発言や行動が、間違いなく【失敗】だってことは【未来予知】を使わなくても私にはハッキリわかってしまった。 だって、アイツ。 お兄さんの顔を見ずに、私にだけ【笑顔】を見せたもの。 そう、私を救う時に必ず見せてくれる、優しく包み込んでくれる柔らかな【微笑み】を。
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