act.1

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  少年は孤独だった。 完全に『独り』だったわけではない。 少年にも一般に『友人』と呼ばれる枠に入る人間はいた。 しかしそれは上辺だけの存在で、彼が信頼する人物は一人としていなかった。 彼の心は満たされることはなかった。 いつからだろうか。 少年は「ロボットになりたい」と願うようになった。 彼ら人間の生活は、アンドロイドによって便利になった。 しかし、そのアンドロイドの進化を急ぎすぎたのが問題だったのだろう。 『アンドロイド』という機械が一般人に普及されるようになったのはつい最近だ。 最初は金持ちにしか手が出せないような額だったそれは最新の機械技術により安くなり、今では家庭用アンドロイドまでいるほどだ。 急速に進化した機械文明。 それはイコール、人間同士の繋がりが薄くなることを意味していた。 生活のほとんどはアンドロイドにまかせっきり。 今やどこの家にもパソコンとインターネットという環境はそろっていて、昔のようにわざわざ会社に出勤して仕事をする必要もなくなった。 便利な『機械』を得た人間はその代償に、人間と接する『機会』を失ったのだ。 そうなれば人間の醜い心は浮き彫りになる。 己の私利私欲のために互いを騙し合い、それに悲しみや罪の意識を感じることもない。 少年はそんな『世界』にうんざりしていた。  
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