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「隊長、そろそろ帰りましょうか」
黒髪の青年が、疲れた顔をして言った。
真選組平服を着ている。
「え、ていうかお前誰でィ」
「も~!何言ってんですか!?山崎ですよ、やーまーざーきー!!」
「監察のクセに一日中俺に付きまとってサボりかィ?土方さんに言ってやろ」
「違うでしょ!休みだったのが仕事入れられて、そのイライラを晴らす為に、隊長が俺を連れ回してんでしょーがァァァ」
「良いじゃねーかィ、たった百円で3時間も楽しめたんだから」
2人の周囲には騒音がひしめいていた。
若者達の笑い声や楽しそうな叫び声、ゲームのメロディーに機械音。
山崎と隊長はゲームセンターに見回りに…いや、仕事中なのをサボって来ていた。
「まあそうですね…沖田隊長、格ゲー強過ぎですから。3時間、挑戦してきた対戦相手のお金で遊んでましたからね。ていうか最初の百円も俺のですから、隊長0円で3時間満喫してますよ」
山崎はキョロキョロ周りを気にして小声で、
「もう出ましょうよ。警察が仕事中にこんな所に長居してたらサボってると思われて、またイメージダウンで局長にどやされますよ」
と囁いた。
「大丈夫でィ、ここは警察官立ち寄り所だし」
「いやいやいや、限度ってもんがあるでしょ!警察官が数時間も滞在してるのなんて見た事ないからねェェ!!」
ゲーム画面は挑戦者を求めるキャラクターが映ったまま数十分、気だるい赤い瞳にも映っていた。
小さいゲームセンター内で、沖田の強さは直ぐに知れ渡る事となり、挑戦してくる者が誰も居なくなったのである。
「休日変わってもらったお詫びに、副長が定時に帰ってきても良いって言ってたんで、そろそろ帰りましょうよ」
「土方あの野郎…覚えてろィ…」
沖田はゲーム機のコントローラーをガチャンと鳴らして席を立った。
ふう、と溜め息を吐いて、山崎は沖田の後に続いてゲームセンターを出た。
夕刻入りの少し傾いた日。
まだ明るく、人々も活発に活動している。
いつもの喧嘩相手であるチャイナ娘とは今日一度も遭う事がなかった。
そのせいもあり、まだまだ苛々を充分に晴らせずにいた。
~~続~~
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