亜理子と少年

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亜理子は、てっとり早く一番手前のドアに体重をかける。 開いたドアの先には、のどかな風景が広がっていた。 亜理子「わぁ・・。」(感嘆) 名前の知られていないであろう野花に、柔らかい風が吹く。 思わず踏み出した足の裏に、土の感触が心地好い。 なだらかに広がる野原の先には、湖が山々を写し取っている。 スーツが汚れたり、皺になるのも気にせずに、思わず座り込んで風景を眺めてしまう。 そこは、なぜかとても懐かしく、いつまでもとどまっていたい心地好さを持った場所だった。 亜理子「きもちいい。」(清々しく) 『見慣れた美しい絵画を切り取ったような場所』 万年筆で、白紙に文字を書いていく。書き心地は素晴らしく、しっくりと手に馴染んだ。 何かを・・・忘れていた何かが、カチリと音をたててはまった気がしたがそのことは書かずにいた。 書き終えると亜理子は、少年の元へ戻り、名残惜しそうにドアを閉じる。 亜理子「ふぅ。」(満足げ) 時計うさぎ「何かを見付けられたようですね。」 亜理子を見て少年は微笑んだ。 亜理子「このドアは、どこに繋がっているの?」 思わず亜理子は口羽しる。 時計うさぎ「どことも繋がりながら、どことも繋がっていません。さぁ。次のドアへどうぞ。」(含みながら) 不思議な言い回しをしながら、再び少年はドアへの道を開けた。
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