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「…ない‥ね」
「その通りだねキノ、ここには無いよ。」
1台のモトラド――エルメスと、その運転手キノは立ち尽くしていた。
時はもう夕方。昼過ぎに入国、エルメスに乗っていろいろ見てまわったがこの国には『店』というものが1件もない。
宿はあったが、食料品・火薬などを売る店が全くないのだ。
「給油所もない…ね。あれだけ探したんだし。」
「それは困る!!」
キノは傍にいる人に尋ねました。『何故ここには商店が無いんですか?』と。
その人は少し考えてから
「人の作る物は信じられないから、だよ。俺はそう思ってるけど?」と答えました。
何やら急いでいるようだったので、それ以上は尋ねずキノは走りだしました。
キノは宿のある地区に行って、試しに色んな人に同じ質問をしてみました――
「…やっぱり人の作るパンとかは恐いからねぇ‥自分で作って自分で食べる。それが一番いいのよ。」
「昔にいろいろあったんだろ?安全のためだ。国中みんなそうしてる…」
「自給自足って訳か~…」
宿に戻って、キノはベッドに座り携帯食を食べていた。
隣に停まるエルメスが間違えずに呟いた。
「モトラドやバギーは燃料を自給自足出来なかったから1台も走ってない…と。」
ここまで自給自足してると、もう人間不信かと思うよ…とまた携帯食を口に含む――
「…人が作ってくれるスープとか、美味しいのに……」
「さいですか~…」
キノはコンソメスープを想像しながら水を飲み、携帯食を飲み込んだ――
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