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「どうしたの?」
こなゆきの中で、きみが言った。
「うん、思い出していたんだ。」
「なにを?」
「きみが死んだ晩のことをさ。」
「わたしが死んだ晩?」
「そう、あの晩だったような気がするんだ。」
「そうね、あなたは、私が死んだ日から変わったわ。」
そうなんだ、あの時から、ぼくはかわってしまったんだ。
いや、変えてしまったんだ。
一番おそれていた世の中に、自ら呑み込まれてしまったのだ。
「わたしにとって、それはうれしいことでもあるけど、同時に、悲しいことでもあるわ。」
「うれしい?」
「そう、あなたは、わたしを本当に愛してくれたわ。」
「悲しい?」
「あなたは、もっと強い人よ。」
ぼくはどちらも自信がない。
ぼくは、きみを死なせてしまったし、何もしてやれなかった。
「ぼくは…」
「分かっているわ。でも、もういいの。」
「‥‥」
「あなたは、見つけたはずよ。」
「でも…」
「さあ、あなたの世界に帰った方がいいわ。」
「待って…」
こなゆきの舞う街が消えていく…
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