17人が本棚に入れています
本棚に追加
第4話『手に入れしはその安堵』~前編~
「はぁっ、はぁっ…!」
まだ朝日が昇る前、彼女はその地を駆けていた。
学園にはまだ生徒の姿が見えるはずもなく、それでも彼女は学園の制服を着用しながらもただひたすらに走り続ける。
「はぁっ、はぁっ・・!!」
目覚めの準備運動にはキツすぎると心の中で愚痴りながらも、その長い髪は風の中を舞った。黄色い長い髪は風に流れ、足は緊張と恐怖で気を緩めば砕け散る。
そんな感覚を味わいながらも蘭は一人走っていた。
学園から郊外に向かって、『魔女の泉』と呼ばれる『精魂の泉』を抜ければそこはもう街並が見えるはずだった。
背後には異形の形をした者が自分を追ってくる。
それから逃げる為、いや、実際には逃げる役の為にただひたすら走り続ける事かれこれ30分弱。
「…っ、駄目…!もう、足が限界…っ」
そう呟けば、自分の限界値と共に体は動かなくなっていた。
膝は痙攣のように震え、異形の者はここぞとばかりに獲物を狩る瞳を光らせている。
―――逃げなくては。
そうは思っていても体がいう事を聞きはしなかった。
軟弱な体つきには所々凶暴な刃が剥き出しにされている異形の者。
恐怖で体は諦めを悟った。
「会長―――ッッ!!!」
最後に助けを求めたのはやはりその人物。
その瞬間に目を閉じれば晶の顔が思い浮かび、今ではその存在が憎い事この上ない。
最初のコメントを投稿しよう!