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「…はは」
照れくさそうに耶蘇の隣に腰を下ろせば、噛み殺せない苦笑と共に晶の小柄な体が耶蘇に隣接していた。
「納得いかねーけど、その『ハニー』ってのに慣れたなっ、て思っちまった」
苦手そうにその顔の奥で笑う仕草が嫌に可愛く思え、それがまた新鮮で『やはり女の子』だという実感。
自然と左手でその小柄な体の少女の頭を撫でれば、自分の照れ隠しにしかならなかった。
「?なんだ?」
「いや、男心くすぐられただけや」
「なんだそれ」
その行動を咎めるでもなく、晶は本当に分からない顔をするだけだ。
そして耶蘇は落ち着きを取り戻す為か、タバコを取り出しては吸い始めていく。
もちろん灰皿なんて設備があるはずもなく、また今回も吸殻を生徒会室に持ち込むつもりなのだろう。
「―――なぁ。友達おるか?」
それは突然な会話の切り出しだった。
一方、その言葉を向けられる晶は不思議そうな顔をするでもなく。
先程の仕草を保っている訳でもなく。
またしてもいつもの瞳へと、何の感情すら表しはしない色へと変えていた。
「俺は誰も信頼しちゃいない。昔も今も、そしてこれからもな」
冷めた瞳と言えばそれまでだ。
だが本人にとって、その瞳は自らの過去を見ているのだろう。
その過去だけは自分のもの。
傷だらけの過去を背負い、都市全ての命を背負い、それでも生きるから何も信じはしない。
信じるものは与えられたものではないから。
「独りは辛いだけやろ」
「もう慣れた」
膝の反動を利用して勢いよく立ち上がれば、その背中だけしか視界には映らない。
それでもタバコの灰は地面に落ちていく。
時間が流れた分だけ、紫煙が空に舞う。
「独りの方が色々と楽だしな」
それは独り言なのか、言い聞かせる言葉なのか。
相槌が聞こえてこなくとも、晶は続けていく。
「誰も巻き込まずに、誰も泣かせずに、誰も傷つけずに――」
主を失くした煙草は地面の上で燃え続けていた。
「誰も不幸にせずに、誰も」
「もうやめぇ」
自分より頭4つ分程小さいその体を後ろから抱き寄せれば、晶の体は自然の摂理で耶蘇に委ねられていた。
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