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「よう、蘭。御苦労さん」
「ご苦労さん、じゃないですよっ!!こっちは死ぬかと思ったんですからね!!」
「助かったんだからいーじゃねーか」
相変わらずな晶の結果論。
眉を曲げてみても、結局は無駄骨折るだけだと妥協するのは学習能力故の決断なのだろう。
「牧師もご苦労だったな、蘭を護ってくれてありがとよ」
かったるそうな瞳をしているものの、晶は護ってくれた行為に珍しく感謝をみせている。
「かまへん。魔物をここに誘き出すんが一番エエて作戦を提供したんはワイやからな」
神聖な地で結界を創り出せるのは牧師。ならばそれを利用した方が事は早く済むだろうという作戦。
「どや?人数いた方がラクやろ?」
軽快に笑って見せるが、正面の晶は怪訝な面持ちを崩しはしない。
「…俺は一人で充分だ。てめーらの命まで面倒は見切れねぇよ」
「あーあ、かわいないなぁ」
「こいつが可愛くて堪るか」
気がつけば『人型』に戻っていた犬神は、ボソリとそんなツッコミを入れている。
「てめーら黙れ」
魔物の姿を消し去った札を拾い上げ、晶は眠そうな目と気だるそうな顔つきだ。
その手の札は黒く染まっており、それに気づくと蘭は当然のように訊ねていた。
「会長、その札…?」
「んあ?ああ、これか。さっきの魔物を封印しただけだ」
そう言いながら空中でピラピラと動かす。
「死んだのにか?」
「あのな、これは北斗から来た『仕事』なんだぞ」
蘭と同じく犬神まで怪訝な顔をするので、晶は仕方なく説明補助を続けていく。
「北斗から来た『仕事』はそれなりに報告が必要なのさ。ちゃんとお仕事しましたっていう証拠が必要ってワケさ」
「その札が証拠なんか?」
「それ以外にあるか?」
ピラピラと遊ばせる札を見ても、一見ただの紙切れにしか見えない。
先程の一件を見ていなければ、の話だが。
「あとは解剖やら後処理の為にこいつの体は必要になるから、こうやって封じ込めたのさ。つまり、俺の仕事はここまでだ」
「面倒臭い事しよるねんなぁ、北斗っちゅうのは」
「今に始まった事じゃねぇさ」
大きく伸びをすれば、仕事後の開放感からか気持ちのいい朝日をその身に受けていた。
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