第4話『手に入れしはその安堵』~前編~

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   ■  □  ■ 地面に座ったまま動けない蘭。 短髪の女生徒に抱きつく耶蘇。 それに耳を尖らせる犬神。 そしてその中心で相変わらずな瞳を見せる晶。 「…あら?」 木の陰からそんな声がすれば、その声の主は未だその場で留まるそんな4人を瞳に映していた。 恐らく晶達の位置からは見えない角度、だがその女性はどこか微笑みながらその光景を瞳に宿す。 「ふふ」 慈愛に満ちた笑みは声になり、その声は隣の男性に聞こえたのか彼は尋ね返していた。 「どうかしたかい?」 「あれ、晶ちゃんよね?」 指差して教えれば、彼も晶達の姿をその瞳に映す。 だが彼はその足を動かす事もせず、その場で彼女と共に留まった。 動いたとすれば、ただなぜるように流れる風で髪が揺れた程度のものだろう。 「相変わらず、か。生きているようで何よりだね」 「あら、会わないの?」 不思議そうに見つめ返す女性は彼の瞳の中にいる。 「止めておこう。どの道、必ず会う事になるよ」 右手に携えた錫杖が鳴れば、その音は風の音色と同化していく。 互いの呉服が揺れ、その中で草が舞ってその顔を隠す。 「巻き込まれるのは遅い方がいいよ。今はまだ、平穏な日々を過ごそうか」 「貴方がそう言うのなら」 女性の美しい長い髪が左右に舞う。 焦点の先にいる晶を振り切るように、二人は背を向けて静かにその場からは姿を消して行った。    ■  □  ■
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