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「悪いが、彼女には会わせられん」
「そんな・・!」
「魔女は人に会うのを嫌うんでな。代わりに俺が話を聞く。そんで『魔女』に伝えてやるよ。それでいいだろ?」
黒い瞳の中にも僅かな蒼味がかかっている。吸い込まれそうなその色に伊吹と伊織が映り込み、その中で彼は「はい」と納得していた。
「会長がそう仰るのでしたら・・・」
「なら話を進めよう」
若干冷めた紅茶の周りに身を固めるのは、縋りつくような瞳をした兄と無反応な妹、そしてそれを視界に入れては話に聞き入る体勢を取る蘭と晶。
そして伊織は語り出した。
「非科学的な事だと言われるかもしれませんが・・、妹はとり憑かれているのです」
晶の瞳に映るのは、無反応な姿をする伊吹の姿。全てを消失したような瞳には何も映っておらず、無機質な人形のように置かれているだけのようだ。
だが、晶の眼には確かに映っていた。
視えていた。
伊吹を取り巻く存在者の姿が。
「異変が起こり始めたのは先月からです。無邪気な子だったのに一切笑わなくなり、日に日に『感情』が消えていったのです」
「・・・・」
「そしてとうとう先週頃から何も喋らなくなり・・、『人形』のようになってしまって・・」
「・・・5人か」
「え?」
「何でもない。独り言だ」
軽い溜息を吐いた後、晶は足を組み直してはソファに重心をかける。
「最初は精神病か何かだと思ったんです。でも―――」
「当たり前だな。だが、ここに来るのが遅すぎたな。妹は近日中に完全に体を乗っ取られるぞ」
「そんな・・!!」
驚愕と不安を要り混ぜた表情で叫び返す伊織だが、それに対する晶は至って冷静な顔をしている。
「方法がない訳じゃない。妹の体が乗っ取られる前に解決してやれるが、準備に時間がかかる。――もちろん、『魔女』に連絡を取るのも含めてな」
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