第一話:二人の魔女・二人の継承者

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「悪いが、彼女には会わせられん」 「そんな・・!」 「魔女は人に会うのを嫌うんでな。代わりに俺が話を聞く。そんで『魔女』に伝えてやるよ。それでいいだろ?」 黒い瞳の中にも僅かな蒼味がかかっている。吸い込まれそうなその色に伊吹と伊織が映り込み、その中で彼は「はい」と納得していた。 「会長がそう仰るのでしたら・・・」 「なら話を進めよう」 若干冷めた紅茶の周りに身を固めるのは、縋りつくような瞳をした兄と無反応な妹、そしてそれを視界に入れては話に聞き入る体勢を取る蘭と晶。 そして伊織は語り出した。 「非科学的な事だと言われるかもしれませんが・・、妹はとり憑かれているのです」 晶の瞳に映るのは、無反応な姿をする伊吹の姿。全てを消失したような瞳には何も映っておらず、無機質な人形のように置かれているだけのようだ。 だが、晶の眼には確かに映っていた。 視えていた。 伊吹を取り巻く存在者の姿が。 「異変が起こり始めたのは先月からです。無邪気な子だったのに一切笑わなくなり、日に日に『感情』が消えていったのです」 「・・・・」 「そしてとうとう先週頃から何も喋らなくなり・・、『人形』のようになってしまって・・」 「・・・5人か」 「え?」 「何でもない。独り言だ」 軽い溜息を吐いた後、晶は足を組み直してはソファに重心をかける。 「最初は精神病か何かだと思ったんです。でも―――」 「当たり前だな。だが、ここに来るのが遅すぎたな。妹は近日中に完全に体を乗っ取られるぞ」 「そんな・・!!」 驚愕と不安を要り混ぜた表情で叫び返す伊織だが、それに対する晶は至って冷静な顔をしている。 「方法がない訳じゃない。妹の体が乗っ取られる前に解決してやれるが、準備に時間がかかる。――もちろん、『魔女』に連絡を取るのも含めてな」
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