17人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのまま帰して宜しかったのですか?」
山北兄妹が部屋から去った後、蘭はソファに寝転がる晶に向けて尋ねていた。
ソファの手すりを枕にして何やら分厚い本を読んでいるようだが、あんな深刻な相談の後に冷静を保ってられるのは不思議で仕方がない。
「何故そんな悠長に構えて・・・」
「そう怪訝な顔をすんな」
顔を見なくとも声の口調でその様子が分かるのは、付き合いが長いからだろうか。
「確かにあのまま祓うのは簡単だったけどな、祓った所でまた新たな奴ら共があの娘にとり憑くのは目に見えてた」
「複数、ですか?」
付き合いが長い分、蘭もそんな内容の会話に戸惑う事も少なくなっていた。
順応とは恐ろしいものだ――――と、思わず口にしそうになるのを堪える。
「確認しただけで5匹だ」
「私には会長みたいな”魔女の力”も”霊感”もありませんから」
「・・・」
山北伊吹にとり憑いていた複数の邪なる者達。
それらを”視る”事も、解決の手段も晶は持っている。
だが、こういう話になると晶は決まってそんな自分を否定する傾向が強かった。
最初のコメントを投稿しよう!