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――――今日も、その高等部生徒会室からは冷めた声が木霊していた。
「帰れ」
シャンデリアが煌々と飾られた豪華な一室。
まるでどこぞのVIPルームのような広さを誇る生徒会室の奥では、一人の女生徒に向かって厳しい声を上げる一人の姿があった。
「生徒会室にまで押しかけてくる勇気は褒めてやるがな。いくら言われようともテディベア研究会などに40万も出費できんわい」
落ち着いた低い声帯。黒い短髪に物腰静かな雰囲気を醸し出す存在。
テラス越しに設置された机で構えるその姿から、彼が『高等部・生徒会長』なのだろう。
「悔しかったらせめてクラブに認定されてから来い」
皮製の椅子をキィと鳴らしてはその体を半斜めに向かせると、向かい合っていた女生徒は少し怯えながらも去っていった。
重い扉の向こうにその姿が消えたのを確認すると、『彼』は溜息混じりに呟く。
「・・やけに素直に帰ったな」
「大方、会長目当てでしょう」
冷静な判断で返答するのは、広い部屋の片隅で書類整理をしていた書記。
ロングの若干黄色い髪を飾る事もなく流し、平均的な身長を保つ女生徒。鳳凰学園高等部2年にして生徒会書記、いくつかの会社を経営している越河コンツェルンの一人娘、『越河 蘭』だ。
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