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「たいへん長らくお待たせしました」
尚久さんが大きな額を持って現れた。
「よっ、待ってました」
パチ パチ パチ
額の登場に拍手喝采が沸き起こった。
「これが俺の作品です」
尚久さんが額を表にひっくり返した。
そこには、日の光を浴びて気高く咲く一輪の花が写っていた。
「へえ、見事な物だな」
「素晴らしいわ」
「一体どこで撮ったんですか?」
「それは、とっておきの場所なんで内緒です」
「ところで、これは何の花だ?」
須賀さんが首を傾げながら質問した。
「須賀係長、知らないんですか?」
「どこかで見たことはあるんだが」
「これは菫ですよ」
「でもどうして菫なんか?」
「ちょっとした思い入れがあってね」
そう語る尚久さんの表情は、どこか切なそうに見える。
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