第1章 狙われた男

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 ピンポーン 「はい、どちら様でしょうか?」   インターホンから聞こえてきたのは、落ち着きのある女の人の声だった。 「北川ですけど」 「少々お待ちください」  ガチャ 「いらっしゃい、どうぞ中へ」   ドアを開けてロングストレートの髪を後ろで1本に束ねた穏やかな顔つきの女性が出てきた。 「おじゃまします」 「皆さんお待ちかねですよ」   俺と北川はリビングに案内された。 「あなた、北川さんがお見えになりましたよ」 「あれ、君は弟の裕史君じゃないか」  「尚久さん、ご無沙汰してます」 「やあ、元気だったかい?」 「はい、実は兄が急用で来られなくなりまして。それで、僕が代役で来ました。この度は受賞おめでとうございます。これは心ばかりのお祝いです。どうぞお納めください」 「気を遣わせてしまって悪かったな。ありがたく頂戴するよ。そうか、あいつ用事が出来たのか、残念だな」  「兄もとても来たがっていたんですが。よろしく伝えてくれと言ってました」 「まっ、しょうがないか。遠慮せずゆっくりしていってくれよ。ところでそちらは?」
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