0人が本棚に入れています
本棚に追加
カトリーヌは振り返るのが怖かったが
震える手を握りしめ
ゆっくりと振り返った
そこには床に伏した母の姿
そして母の背中には垂直にナイフが突き刺さっていた
カトリーヌは呆然と息絶えた母を見つめ
次にカトリーヌの目が捉えたのは
母の背中に刺さったナイフを引き抜く男
大柄で幼いカトリーヌには
まるで鬼や怪物のようにみえる
月明かりが男の顔を照らす
…黒人?
男とカトリーヌの目が合った
とてつもなく冷たい瞳がカトリーヌを見据えた。
大柄の男は、幼いカトリーヌにも躊躇なくナイフを向け
小さな体目掛け大きく振りかぶった
カトリーヌは反射的に目を閉じた。
………しかしカトリーヌの体に邪悪な刃はとどかなかった
カトリーヌは恐る恐る瞳を開く
そこには首もとにナイフが深々刺さったにもかかわらず
幼い最愛の我が子の命を守ろうと必死に大男にしがみつく
父の姿…
我が子を守ろうとする父親の姿にひるんだ大男
そのまま何も盗らずに逃げ去った…
カトリーヌは夜の闇と無音に包まれていた。
最初のコメントを投稿しよう!