~カトリーヌ~

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カトリーヌは振り返るのが怖かったが 震える手を握りしめ ゆっくりと振り返った そこには床に伏した母の姿 そして母の背中には垂直にナイフが突き刺さっていた カトリーヌは呆然と息絶えた母を見つめ 次にカトリーヌの目が捉えたのは 母の背中に刺さったナイフを引き抜く男 大柄で幼いカトリーヌには まるで鬼や怪物のようにみえる 月明かりが男の顔を照らす …黒人? 男とカトリーヌの目が合った とてつもなく冷たい瞳がカトリーヌを見据えた。 大柄の男は、幼いカトリーヌにも躊躇なくナイフを向け 小さな体目掛け大きく振りかぶった カトリーヌは反射的に目を閉じた。 ………しかしカトリーヌの体に邪悪な刃はとどかなかった カトリーヌは恐る恐る瞳を開く そこには首もとにナイフが深々刺さったにもかかわらず 幼い最愛の我が子の命を守ろうと必死に大男にしがみつく 父の姿… 我が子を守ろうとする父親の姿にひるんだ大男 そのまま何も盗らずに逃げ去った… カトリーヌは夜の闇と無音に包まれていた。
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