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青年の体には血が付着していた。無論、彼の血ではない。彼が手に持っている細長い剣、これで人を斬ったときに浴びた返り血だ。もちろんその剣も血で赤くなっている。
そして店主は、首より上が斬られていた。当然即死。
「…………」
青年は無言で、ショートケーキが置いてある席に向かった。その席以外に客はいないらしい。
食べかけのショートケーキ。
「あなた」
洗面所から出てきたビルティーナが青年に声をかけた。
伊達(だて)に“疾風の織姫”と名乗っているわけじゃない。ビルティーナは戦いのプロなのだ。血の臭いぐらいかぎ分けられる。
「やあ。“疾風の織姫”」
顔は見たことないがどこかで聞いた声だ。赤色の戦闘服に白いマント姿のこの男……。
「あなた……」
ビルティーナは青年が誰だかわかってしまった。
「“無音の響き手(むおんのひびきて)”……!?」
その青年が誰だかわかってしまったビルティーナの声は震えていた。
「そうだ。僕は“無音の響き手”コルツフート。早速だが君を消す。“疾風の織姫”」
“無音の響き手”コルツフートは細長い剣の先をビルティーナに向けた。
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