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「私たちはこの世界を滅ぼす」
“魔王”は言った。
「証拠として、近いうちに都を一つ落とそう。ではさらばだ。愚かなものたちよ」
“魔王”たちの姿はそこで消えた。
それから二日後、ある都が消えた。滅んだ、のではなく消えたのだ。都だったところが、文字通り跡形もなく消えていた。
都があった場所だけ、砂となって……。
*
「なんで、私なの?」
体も声も震えながら、だがそれでも平静を装って、ビルティーナは尋ねた。
「君が“疾風の織姫”だから」
剣先をビルティーナに向けたまま、“無音の響き手”コルツフートは応えた。
「強いって、こと?」
「いや」
コルツフートは一歩ビルティーナに近づき、剣先をビルティーナの額に当てた。
「単に君に興味があるからさ」
「興味…?」
「そう。女や魔法使いとしてではなく、一人の人間として、興味があるんだ」
コルツフートは剣を少し引いた。
突かれると思い、ビルティーナは姿勢を低くし、コルツフートの腹に頭から突っ込んだ。
「ぐおっ!?」
するとコルツフートは吹っ飛び、店の壁に衝突した。壁にヒビがはいる。
ビルティーナは食べかけのショートケーキを皿に乗せたまま持ち、窓を割って外に飛び出た。
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