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コルツフートは後ろを振り向き、ビルティーナに歩み寄ってくる。
「どうした“疾風の織姫”。どうして何もしてこない」
コルツフートは屋根のど真ん中で立ち止まった。
「!」
ビルティーナは一瞬、物凄い殺気を感じた。コルツフートからではない。ビルティーナの後ろから。
だからビルティーナは後ろを振り向いた。
「よそ見を」
コルツフートが駆けてくる。
「する――」
ビルティーナが前を向き直ろうとしたその時、ビルティーナの顔すれすれを何かが通り、それはコルツフートの右目に刺さった。
「ぐあぁ!」
コルツフートの右目に刺さったのは、矢だった。
彼はそれを無理やり引き抜き、右目を押さえて違う屋根に跳び移った。
ビルティーナは再び後ろを振り向いたが、人影どころか、気配すら感じられない。
「し、“疾風の織姫”!君、仲間がいたのか!」
右目を押さえ荒い息をつきながら、コルツフートは叫んだ。
「えぇ」
ビルティーナは嘘をついた。
仲間はいないと言えば、彼は余裕で自分を殺す。だが仲間がいると言えば、危機感を覚えてこの場を去るのではないか、と思ったからだ。
だが……、
「そう。なら、そいつも殺さなきゃな」
ビルティーナの期待は見事に裏切られた。
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