1人が本棚に入れています
本棚に追加
少し経つと呪検が役目を果たしたかのように消えていきました。
「……魔王?」
シーナはその単語に鋭く反応していました。
「シーナ?」
ノアールが心配そうな顔でシーナの顔を覗きこみました。
「私ね、前世の記憶があるんだ。死ぬ所まで、綺麗に残ってるんだ。」
何を言い出すかと思えば、前世の記憶があると言い出したのです。
「昔は魔王と人間は仲が良かったの。魔王も今みたいに憎しみや悲しみや怒りなどという感情には無縁な明るくて優しい魔王だったんだけど」
はっきり言って、信用出来ませんでした。
あの魔王が優しかったなんて想像し難かったのです。
「私はね、魔王と凄く仲良かったの。魔界自体、人間界と仲良かったな。
でもそんな平和な世界に亀裂を生んだのは紛れもなく私だったの」
「え?」
シーナは寂しそうに、遠くを見つめました。
「赤髪の神竜族が私に近付き始めたの。
女遊びが激しい人でね、私はそれを知ってたから相手にしなかったの。
だけど突然、そいつから告られて、丁重に断った筈なのに、しつこくて。そして唇から操人術をかけられた」
「!!?」
最初のコメントを投稿しよう!