憎悪

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憎悪

 『どこいくの』    『レイコちゃん家』    最初妹が保育所から帰るまでの  間だったレイコの家での滞在時間が  出稼ぎに出てた父親の怪我での  帰宅により  寝る寸前までに延びていた    働く気を失くす何かがあったのか  帰って来た父親は酒浸りとなり  母親はますます働く事を余儀なく  されてしまった    妹は保育所に迎えに行き  ご飯と風呂が終わると  8時前には寝てしまうので    その間だけ家に帰りまた戻るという  生活を繰り返していた    でもそれだけでもアタシにとって  帰る場所になっていた    ある日いつものように妹を  迎えに行くと  涙目になっているのに気がついた    (ユキちゃんね…お友達にからか  われたみたいで…ケンカしちゃった  んです)    アタシの顔を見た妹は  走ってしがみついて来た    『お姉ちゃん  うちってビンポウなの?  だから遊園地に行けないの?  ユキのお弁当タマゴヤキと  ウインナーだけなの?』    思わず保母さんの顔を見ると  気まずいような哀れむような  顔をして    『お家の事をからかわれた  みたいで…』    と言った    家に帰り泣き疲れて寝てしまった  妹の顔を見ると  悔しさや切なさが込み上げてくる    茶の間から昼酒を飲み  大きないびきをかく父親に  初めて憎悪がわいた    (お金が欲しい)    誰にも馬鹿にさせないように  ユキが辛い思いしないように  
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