【序章】貴族堕ちの捨て子

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―――ワァアアアア 耳を支配するは歓声。 多くの期待と歓声を受けるは若き少年。 『先攻するは――無敗王者・ロベルト=ハイド!!』 名前を呼ばれた少年剣士は、何の感情も映さない瞳を観衆に向け、右手を軽く上にあげた。 手元には、ボロボロになり、いかにも切れ味が悪そうな鉄製の剣―― 広い、広い石でできた円形のフィールド。 少年剣士の反対側には、体格がいいガッチリとした鎧を着込んだ男が立っている。 相手の武器は、『斧』。 少年剣士のそれとは違い、造りも重厚かつ研ぎ澄まされたその刃は妖しく黒光りしていて、美しい木製の柄によく映える。 見ただけでも解る、少年剣士の『不利』。 (……ったく、やってくれるぜ毎度毎度!) 少年――ロベルトはチッと舌を鳴らすと、目の前の敵を一瞥する。 闘戯場とは、貴族の道楽である『賭け事』の一つだ。 強い者には、『低倍率』――つまりは買っても配当は伸びない。 弱い者には、『高倍率』――弱者が強者に勝てば当たり前に配当は大きくなる。 そのレベルの埋め合わせとして、 『武器チャージ』 『魔法チャージ』 という2つのルールが設けられる。 つまり強くなれば強くなる程、持てる武器は役立たずになるという寸法だ。 ロベルトは武器を渡す時の、あの下卑た笑いを浮かべた者がうらめしくなる。 (上は、今回も僕を殺す気満々というわけか……) 相手の男もロベルトの武器を見て、ニヤニヤ笑いを浮かべている。 (―――だが、残念だったな!相手が悪い…) ―――ガチャ ロベルトが剣を構える! 『―――始め!』 と 同時に試合開始のアナウンスが流れた。
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