【序章】貴族堕ちの捨て子

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斧を持つ男が、ロベルトに走り込んでくる! 力任せに、斧を振り回して! 「……おっと」 ロベルトは斧が当たる寸での所を、短く後ろにバックステップを繰り返し、回避する。 「ククク、逃げても無駄だ」 斧を振り回すその怪力は相当なもので、地面を叩いたその跡にはくっきりと石にひびが入っていく。 「……チィ!」 手持ちの武器では、相手が着込んでいる鎧までもを打ち砕く破壊力などないことをロベルトは悟っていた。 (ならば、狙うは――…) 逃げ回るのを止めたロベルトは、ボロボロの剣を盾に――男と応戦する! ―――キィン、キィィン 斧と、剣の刃とが交わり……回りに金属音を響かせる! リーチは体格分、幾分か男の方に分がある―― 「……ゲヘヘ、防戦一方みてェだな!」 ニヤニヤと嗤う男。 「……そうでもないさ」 ―――バキィ! 突然、木が折れる音がしたかと思えば…… 折れたのは、男が持っていた斧の柄だった。 折れた斧の刃が付いた部分は、衝撃により空中でクルクルと孤を描きながら……… ―――ザッ! 男とロベルトの間の床に突き刺さった! 「……うぁあ!」 武器がない者は、もはやただの人同然だ。 「――自分の怪力が災いしたな。斧を振り回す度にアンタは自分の武器を破壊していたんだ…… 斧(己)が故に、木製の柄をな」 ――――ザッ! 剣先を男に突き付ける。 「……ヒィイイ!!」 男は腰を抜かして、その場に座り込んだ。 「―――勝負あり、だ」 ――剣闘士・ロベルト=ハイド。 生い立ちは、といえば中流の貴族階級の長男として生まれた。 8歳になった誕生日に、親に連れられてきた『闘戯場』。 まさかその日、自分が親に棄てられたなど思いも寄らなかった。 そうして、この戦いの中生き抜き――― 今日は、そんなロベルトの15回目の誕生日…… すべてはここから始まった―――。
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