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―――ワァアアアア
勝負がついたというのに、まだまだ闘戯場の熱気は醒めやらない。
「……ふぅ」
ロベルトは闘戯場のバトルエリアから延びる客の花道を、場内の生活エリアに向かって歩いていく。
「――ちょっとアンタ!どーしてくれんのよォ」
ふと、花道の途中で少女の声が聞こえた。
(……なんだ?)
ロベルトは声の主が気になり、声のする方へと視線を向けた。
この闘戯場の客層は金持ち貴族か、物好きしかいない。
そんな中、その声は明らかに幼い少女の出すそれだったからだ。
大男や貴族の男達の間から、ぴょこんと飛び出したその声の主を見て――彼は驚いた。
ボサボサの長さが揃っていない……だが上質の金の髪、瞳は翡翠の宝石にも似た美しいエメラルドグリーン。
身体付きは華奢で、……だが着ている服は所々に薄い汚れが付いていた。
(孤児、か)
ロベルトが冷静に分析するその横で、少女はロベルトをギロリと睨んでいる。
「アンタのおかげで、せっかく稼いだお金がパーだわよ!一体どうしてくれんのよ、このオトシマエはっ。負けると思うじゃん……あんなボロ剣じゃ、ジャガ芋ひとつ切れないじゃないのよ。何で勝っちゃうワケ?」
(――うるさいな)
「生活がかかってるトコ悪いが、八百長の相談は受け付けないからな」
ロベルトがそう言うと、少女は肩をワナワナと震わせた。
「…あんたなんか負けちゃえばいい!!!」
―――バシャァアア!
少女はそう叫ぶと、手に持っていた真っ赤なトマトジュースをロベルト目掛けてぶちまけた!
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