12人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもついてくる君に僕が言った言葉…
「もう、ついて来るなよ!」
その時君はとても悲しそうな顔をして、僕の背中を見つめ、笑顔を失い…その目には「生」という輝きさえ生まれず、黙って僕を見送った。
しばらく歩き、君のいない寂しさに気付き、振り返ってももう君は居なかった。
その余りの不安に、僕は今来た道を逆に辿り、その足は早いテンポを刻み、道の先へ進むより軽いのに今その時は、気付かなかった。
君の姿が目に入った時…不安の入れ物は割れて涙が溢れるのを必死で抑え、僕は君にこう言った。
「ついて来たかったら、ついて来ていいよ。」
弱い僕の、精一杯の一言だった。
息を切らした僕は、その一言に時間と心を込め…
その心を受け取ったかの様に君は、本当の笑顔をこぼし…その手を僕に差し延べた。
そして、道をまた歩み…その足取りは軽く…先も明るく光っていた。
近くにあるモノは、近くにある時には大切さに気付く事なく、気付いたときには手の届かない遠くに…
そうならない様に、今度はしっかりと手を繋ぎ歩いていった。
最初のコメントを投稿しよう!